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逆求償(従業員から雇用主への求償) [法律に関する問題]

 従業員が職務の執行中に、第三者に損害を与えた場合、雇用主も責任を負うこと、雇用主が第三者に被害弁償したら、従業員に対して求償できる、という規定が民法にあります。ただ、雇用主が全額求償はできず、信義則上、相当と認められる程度において、求償権は制限されるとされており、これについては争いはありません。

 問題は、当該従業員が第三者に被害弁償した場合、従業員が雇用主に求償できるかです。民法に規定がなく、争いがありますが、これについて認めた判例があります。事案は交通事故でして、従業員が仕事で雇用主の車を運転中、バックする際、後方確認が不十分で停車中の被害車両に衝突したというもので、従業員が被害弁償した後に、雇用主に求償したという事件です。

  雇用主は、事故発生について、雇用主が長時間運転を強いていたとか、会社に責められる事由はなく、また、逆求償について民法に規定もないことから、加害者である従業員が会社との関係では全責任を負うべきであり、従業員からの求償は認められないとして争いました。

 これに対して、裁判所は、報償責任(雇用主は従業員の活動によって活動領域を拡張しているから、雇用主は第三者に責任を負うとする考え)の見地から、雇用主にも責任の負担部分があり、そうすると,従業員が全損害を負担した場合は、自己の負担部分超えて被害弁償したことになるので、従業員は雇用主に求償できるとし、本件では、雇用主の責任は7割であると判断しました。、雇用主が、任意保険に加入しておらず危険の分散措置を講じていなかったことから全損害を従業員に負担させるということは、雇用主の配慮に欠けている、ということも理由に挙げています。

 法的には従業員と雇用主の負う債務の関係は不真正連帯債務とされておりますので、雇用主の負担分について求償されるという考えもあるところですが、雇用主としては、従業員の交通事故で、被害者との関係で責任があるのは、理解できるが、当該従業員の関係で、7割も責任があると判断されるのは、なかなか納得できないところでしょう。

 


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